International cooperation policy (PDF)
Document Details
Uploaded by AdroitBiography
Doshisha University
Tags
Related
Summary
This document is a set of lecture notes on international cooperation policy, covering topics such as the role of the private sector in international development, investment activities, and the relationship between the private sector and developing countries.
Full Transcript
国際協力政策 第7回 民間資本の役割と動向: 企業の社会貢献と社会的責任 小テスト① 対象:第1~4・6・7回目の講義内容 アクセス:e-class(第7回目の箇所)にMicrosoft FormsのURLを掲載(11月6日(水)から解 答可) 点数:合計15問(15点満点) 解答期限:11月11日(月) 注意事項 質問の形式は,Microsoft Form...
国際協力政策 第7回 民間資本の役割と動向: 企業の社会貢献と社会的責任 小テスト① 対象:第1~4・6・7回目の講義内容 アクセス:e-class(第7回目の箇所)にMicrosoft FormsのURLを掲載(11月6日(水)から解 答可) 点数:合計15問(15点満点) 解答期限:11月11日(月) 注意事項 質問の形式は,Microsoft Formsの冒頭で説明 学生IDの記載ミスに注意 時間に余裕をもって解答すること 解答は1回のみ → 解答をよく確認した上で,送信ボタンを押すこと 送信後,確認メールを受信することが可能 → 無事に解答を送信できたかは各自で確認すること 2 ゲストスピーカーによるご講演 日時:11月12日(火)16:40-18:10 演題: 「くらしの礎を「創る」「担う」「つなぐ」~SDGsに貢献するエンジニアリング産業~」 講師:白井利昌氏 JFEエンジニアリング株式会社 環境本部 エンジニアリングセンター長 プロフィール 愛知県出身。京都大学工学部化学工学科を卒業後,京都大学大学院工学研究科化 学工学専攻を修了。三菱重工株式会社横浜製作所環境装置設計部設計一課に入社。 廃棄物処理施設に関する設計,開発,PJ管理(PM・EM複数),EPC責任者,運営な どを経験。その後,JFEエンジニアリング株式会社環境本部に入社し,開発センター長 を経て,2023年より現職。 3 小レポート②について 小レポートの課題(質問)は,翌日(11月13日(水))午前 中にe-class(第8回目の箇所)に掲載 提出期限:11月18日(月) 1,000文字程度 Wordで作成し,e-classより提出 必ず氏名・学生IDを記載(表紙などは不要) 評価の対象(10%) 4 前回までの内容 本日の講義では 世界の貧困状況 目的:国際協力における民間資本の役割・動 「国際協力」とは? 向などについて理解を深める 国際協力の基本的な仕組み 日本のODA 民間企業と途上国 途上国支援のアプローチの変遷 民間資本の動向と役割 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 5 民間企業と途上国 投資活動(海外直接投資・間接投資) CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任) 活動 CSV(Creating Social Value: 共通価値の創造)活動 BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネス ソーシャル・ビジネス 6 民間資本の動向と役割 民間企業の投資活動 海外直接投資(FDI:foreign direct investment) ある国の企業が別の国において長期的な経営・生産を目的として行う投資(生 産・販売・サービスを供給するなどして,投資先国で「直接」的に事業経営を行 う行為) 間接投資 投資先国での事業展開を目的としない証券の取得や公社債の購入,貸付など のこと(ポートフォリオ投資とも呼ばれる) 7 民間資本の動向と役割 民間資本の傾向 途上国への民間資本の流入は,経済のグローバル化と共に増加傾 向にあり,近年は,政府開発援助(ODA)を上回る傾向にある 民間資本(特に,間接投資)の動向は,世界経済の状況に影響され るため,政府開発援助(ODA)などに比べ変動が激しい 民間資本の流入は,国・地域によって大きく異なる 8 途上国への政府開発援助 vs. 海外直接投資 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% ODA FDI 注:純流入額の基づく。途上国は低・中所得国。 出所:世界銀行 World Development Indicators(https://databank.worldbank.org/reports.aspx?source=world-development-indicators) 9 海外直接投資の地域別構成比 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 高所得国 東アジア・大洋州地域 ヨーロッパ・中央アジア ラテンアメリカ・カリブ海 中東・北アフリカ 南アジア サブサハラ・アフリカ 注:純流入額に基づく。「高所得国」以外の地域は,低・中所得国のみを含む。 出所:世界銀行 World Development Indicators(https://databank.worldbank.org/reports.aspx?source=world-development-indicators) 10 海外直接投資の地域別構成比 (途上国(低・中所得国)のみ) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 東アジア・大洋州地域 ヨーロッパ・中央アジア ラテンアメリカ・カリブ海 中東・北アフリカ 南アジア サブサハラ・アフリカ 注:純流入額に基づく。 出所:世界銀行 World Development Indicators(https://databank.worldbank.org/reports.aspx?source=world-development-indicators) 11 民間資本の動向と役割 海外直接投資の増加の要因 国際的な生産ネットワークが途上国を巻き込む形で発展 生産ネットワーク(サプライチェーンとも呼ばれる)とは? 企業が何らかの財やサービスを生産する上で,中間財(原材料や部品など)や必要な サービス(マーケティングなど)を他社から調達することで張り巡らされる企業間のネット ワーク 部品の輸出入といった貿易関係だけでつながっている場合もあれば,親会社・子会社と いった資本関係にある場合もある 近年,中国や韓国,台湾など,新興国の企業も中心的役割を担うようになり,これらの国 の企業による直接投資も増加傾向にある 12 民間資本の動向と役割 海外直接投資に期待される途上国の経済発展への貢献 返済に相当する負担がない 資金の流入だけでなく,雇用の創出や技術・経営ノウハウの移転(技術水 準・生産性向上),輸出産業の発展など ただし,直接投資でも,石油や鉄鉱石などの資源開発関連の投資であれば, 雇用創出効果は限定的 直接投資を積極的に誘致するには,投資環境(インフラや法制度など)の整 備が必要 13 民間資本の動向と役割 海外直接投資の恩恵を最大限享受するには… サプライチェーンや製品開発を通じての外資企業と地場経済との密接な関 係の構築 国内での外資企業による(地場経済に見合った)研究開発を奨励 国内の教育水準の向上 国内の金融セクター・インフラ・法制度の整備 ↓ 技術的蓄積・産業集積を進め,外資企業を地場経済に根づかせ,その国が 重要な生産拠点としての地位を確立していく必要がある。 14 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 途上国において期待される民間企業の役割 従来:主に海外直接投資などを通して,雇用創出や技術・経営ノウ ハウの移転,輸出産業の発展などを通じた経済成長に貢献 近年:問題解決に向けたより直接的な取組み - 従来の営利・非営利の枠組みを超えた動き - 企業が社会問題などに取り組む動き - 社会的目標を掲げつつ,寄付や補助金に頼らずにビジネスとして事業を展 開する社会起業家の活躍 15 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 16 出所:勝間(2012,図16-1) 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 企業の社会貢献 これまでの企業による主な社会貢献 営利活動で得られた余剰資金を社会に還元する事業,すなわちフィランソロ ピー(社会貢献)活動(例:ロックフェラー財団,ビル&メリンダ・ゲイツ財団) 本業とは切り離されている 企業による新たな社会貢献=CSR(corporate social responsibility) 企業が本業において社会や環境に負の影響を与えないために取り組む活 動 CSRとは,持続可能な社会を作るために企業が果たすべき責任 17 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 企業の社会貢献 良質なサービス・製品を提供すること・「既存の法律を守る」だけでは不 十分(例:公害問題など) ↓ 自ら行う事業に直接・間接的に関係する社会環境問題への責任を果た すことが求められている (例)サプライチェーンにおいて,自らが携わる部分だけでなく,取引先が環境や社 会に悪影響を与えないようにすることまでが企業の責任範囲 CSV(Creating Shared Value)(共通価値の創造) 経済的価値を創造しながら,社会的ニーズに対応することで社会的価値を創造 する ⇒ 社会的価値の創造と利益追求を両立させようとする考え方 社会的問題・課題解決のビジネス化 【例】ケニアのM-Pesa(モバイル送金サービス) 18 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 国連グローバル・コンパクト(UNGC) 各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することに より,社会の良き一員として行動し,持続可能な成長を実現するため の世界的な枠組み作りに参加する自発的な取組み 1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)でコフィ―・アナン国 連事務総長(当時)が提唱 → 「人間の顔をしたグローバリゼーショ ン」への取組みを提案 法的な強制力はなく,企業が責任ある「企業市民」として自主的に 行動することを促している 出所:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(https://www.ungcjn.org/gcnj/about.html) 19 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) 国連グローバル・コンパクト(UNGC)の10原則 出所:グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(https://www.ungcjn.org/gcnj/principles.html) 20 持続可能な開発目標(SDGs)における企業の役割 民間企業も課題解決を担う主体として位置づけられている 企業(特にグローバルに活動する多国籍企業)は,非営利部門よりも,マ ネジメント能力・資金調達力・技術開発力・マーケティング力などでより 優れている ⇒ SDGs達成のためには,民間企業の協力が不可欠 SDGsが設定する目標を経営戦略に取り込み,事業機会として生かす動 きが広がりつつある。 例:パナソニック (https://www.youtube.com/watch?v=hNZOKf9sdHI) 例:オムロン(サステナビリティ推進室) (https://www.omron.co.jp/sustainability/) 21 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) ESG投資 - ESGは環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(企業統治) (Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉 - ESG投資とは? 企業の価値を測る指標として非財務情報であるESG要素を考慮した投資 - 2006年,アナン国連事務総長(当時)が金融業界に対し,ESGを投資プ ロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI:Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけ 「責任投資原則」: 機関投資家の意思決定プロセスにおいて,短期的な利益を追求 するのではなく,ESG課題(環境,社会,企業統治)を反映させるべきとした考え 22 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) インパクト投資 金銭的なリターンと並行して,社会的および環境的に測定可能なプラスのインパクトを もたらす意図をもって行われる投資 市場規模:1兆1571億ドル(運営資産額(AUM))(2017年から2022年の間に約 10倍に拡大) (出所:Global Impact Investing Network(https://thegiin.org/)) 気候変動への対応やヘルスケアへのアクセスの公平性,ジェンダー平等などといった 社会的課題に対する意識の高まりがインパクト投資の継続的な成長を牽引 投資においても,社会や環境などへの配慮が当たり前になりつつある 課題:認知度・インパクトの測定・評価 23 インパクト投資の位置づけ 出所:GSG国内諮問委員会(2020)『インパクト投資に向けた提言書2019』 24 インパクト投資(例:The Equality Fund) カナダの非営利団体 ジェンダーレンズ投資 カナダ政府より3億ドルの資金を得 「2×Global」による定義: て,2019年に設立 ① 女性が保有する企業(保有率 助成金の交付・慈善事業・インパク ≧51% or 女性が設立) ト投資の3本柱により,世界中の ② 女性が経営する企業(経営陣 フェミニスト団体を支援 or 取締役会≧30%) ユニークな資本調達の仕組み: ③ 女性の従業員がいる企業(従業 ジェンダーレンズ投資により得たリ 員の比率≧30-50%) ターンをフェミニスト団体に寄付 ④ 女性向けの商品・サービスを提 出所:The Equality Fund(https://equalityfund.ca/) 供する企業 (出所:2× Global ( https://www.2xchallenge.org/criteria )) 25 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) ソーシャル・ビジネス 社会が抱える課題の解決をミッション (使命)として,ビジネスの手法を用いて 取り組むもの。 BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネス BOP層:年間所得が購買力平価 (PPP)ベースで,3,000ドル以下の低 所得層 途上国のBOP層にとって有益な製品・ サービスを提供することで,その国の生 活水準の向上に貢献しつつ,企業の発 展も達する持続的なビジネス 出所:日本貿易振興機構(https://www.jetro.go.jp/theme/bop/basic.html) 例:ユニリーバ(インドでのシャクティ (Shakti)・プログラム) 26 企業の社会貢献と社会的責任(CSR) ソーシャル・ビジネス・BOPビジネスの例 サラヤ株式会社 CSR活動(100万人の手洗いプロジェクト)→ ソーシャル・ビジネス(病院で手の消毒100%プロジェクト) ビジネスで社会課題を解決できるか? 利益がでないとビジネスを継続できない(持続可能なソーシャル・ビジネスになりえ ない) 出所:https://tearai.jp/ 27 まとめ 海外直接投資・間接投資を含む民間資本の途上国への流入は増加傾向。 ただ,海外直接投資の恩恵(雇用創出や技術・経営ノウハウの移転,輸出 産業の発展など)を最大限享受するためには,外資系企業と地場経済と の密接なつながりや投資受入国の教育水準の向上,経済インフラや金融 制度,法制度の整備が必要。 近年は,従来の営利・非営利の枠組みを超えた企業の動きが活発化 (CSR活動や社会起業家の活躍など)。 企業の社会的責任(CSR)とは,持続可能な社会を作るために企業が果 たすべき責任であり,企業が本業で社会や環境に負の影響を与えないた めに取り組む活動。加えて,新たな概念として,利益追求と社会価値の創 出を両立させようとするCSV(共通価値の創造)も登場。 ESG投資・インパクト投資など,投資においても社会や環境などへの配慮 が当たり前になりつつある。 28 参考文献 勝間靖(編)(2012)『テキスト 国際開発論 貧困をなくすミレニアム開発目標へ のアプローチ』(ミネルヴァ書房),第16章. 黒岩郁雄・高橋和志・山形辰史(編)(2015)『テキストブック開発経済学』第3 版(有斐閣ブックス),第6章. 黒崎卓・大塚啓二郎(編)(2015)『これからの日本の国際協力―ビッグ・ドナー からスマート・ドナーへ―」(日本評論社),第8章 大森佐和・西村幹子(編)(2022)『よくわかる開発学』(ミネルヴァ書房),pp. 168-183. 下村恭民・辻一人・稲田十一・深川由起子(2015)『国際協力 その新しい潮 流』第3版(有斐閣選書),第10章. 戸堂康之(2021)『開発経済学入門(第2版)』(新世社),第6章,pp.280- 282. 山田満(編)(2018)『新しい国際協力論』改訂版(明石書店),第12章. 29