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東洋大学経営学部の企業戦略論です。講義資料は企業戦略論の概要、成績評価、講義スケジュール、参考図書、戦略立案の定石、経営戦略論、経営戦略の階層性、競争戦略、企業戦略、事業活動に関する情報です。

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今⽇の概要  ガイダンス  講義形態 企業戦略論 ...

今⽇の概要  ガイダンス  講義形態 企業戦略論  成績評価の⽅法・基準 第1回  講義の⽬的・到達⽬標 企業戦略論の概要  経営戦略論の概要  講義スケジュール 東洋⼤学 経営学部 ⼭⼝ 裕之 1 2 講義形式について テキスト・参考書  パワーポイントを⽤いたレクチャー形式が基本  資料配布・⼩テスト/課題︓ toyonet-ace  テキスト 講義前   網倉久永・新宅純⼆郎(2011)「経営戦略⼊⾨」⽇本経  講義資料のプリントアウト (公開期間は講義前後1週間を予定しています)。  ファイルにはパスワードがかかっています︓ corporateSt3 済新聞社.(3672円)  講義範囲に対応するテキストの箇所を予め読んでおくと理解が捗ります。  講義中  参考書  プリントアウトした講義資料にメモをとりながら授業を受けてください。  講義中に、発⾔を求めたり、toyonet-ace上での操作を求める場合があります。  沼上幹(2008)「わかりやすいマーケティング戦略(新  講義中の私語など、他の受講者の迷惑になる⾏為は禁⽌します。当該⾏為を⾏う者に対し 版)」有斐閣.(2052円) ては退室を命じることがあります。  坂下昭宣(2014)「経営学への招待 (新装版)」⽩桃書房  講義後  榊原清則(2013)「経営学⼊⾨(上・下)(第2版)」  メモした講義資料を振り返り理解を深めてください。 ⽇本経済新聞社  講義内容に関連するテキストの箇所を読み理解を深めてください。  ⾃⾝の理解を⽂章化することをお奨めします。  理解を確認する⼩テストをtoyonet-ace上で実施する場合があります。 3 4 成績評価の⽅法・基準 講義の⽬的・到達⽬標  基本点︓α  企業戦略を考えるうえで最低限必要なツール・概念を理  期末試験︓80点 解している(説明できる)。  ⼩テスト︓20点  それらを⽤いて企業⾏動を分析することができる。  加算点︓β  講義中の発⾔  それらを⽤いて企業戦略を考えることができる。  評価点  =(α+β)  厳格に成績評価を⾏う = 公平性の確保 5 6 その他 「戦略」⽴案の定⽯  質問・相談等は、講義中/toyone-ace上で受け付けます。  1.問題を把握する  現在の状況の把握 このズレ=問題  オフィスアワー︓  望ましい状況の把握  ⾦曜⽇12:10〜13:00 @21103  2.(問題の) 原因を探る  妥当な解決策を探る  メールアドレス︓ [email protected]  状況の変化を読む  状況の変化を⽣む 7 8 儲けという状況の捉え⽅ 戦略を考える  SWOT分析  1.問題を特定する(現象を記述する)  儲かっているという状況を内と外に分けて考える  現在の状況の把握  望ましい状況の把握  企業内部︓能⼒・資源  外部環境︓選択した活動の場(ポジショニング)  2.原因を探る(現象を説明する)  効果的な道筋を描く。  将来の状況を読む。  将来の状況を⽣む。  現象の記述と説明においてゼロから考える必要はない。 donʼt reinvent the wheel, standing on the shoulders of giants  記述する道具︓概念・枠組  原因の候補︓理論 9 10 経営戦略とは 経営戦略論 〜定義〜  経営戦略  伊丹敬之『新・経営戦略の論理』⽇本経済新聞社,1984年, p.19.  特定の経営上の⽬的を達成するための道筋 「経営戦略とは, ①組織活動の基本的⽅向を環境とのかかわりにおいて⽰すもので, ②組織の諸活動の基本的状況の選択と  経営戦略論 ③諸活動の組み合わせの基本⽅針の決定  特定の⽬的を達成するための道筋を考えるうえで役⽴つ概 を⾏なうものである.」 念・枠組・理論に関する知識のまとまり  状況の把握・記述の仕⽅ 外部環境 ①どういう活動を  状況に影響を与える要因(原因)の候補 ②どこで 企業 ③どのように 組織 行うのか 11 12 経営戦略の階層性 企業(全社)戦略と事業(競争)戦略の違い  事業/競争戦略  企業/全社戦略  事業での利益獲得  企業の成⻑・事業の選択 全社戦略・企業戦略 企業の成⻑ 事業領域の選択  『どのように』事業を運営す  『どこで』事業を運営するの corporate strategy トップ るのか(競争するのか)︖ か(競争するのか)︖  ある事業に関して  複数の事業に関して 事業戦略・競争戦略 事業活動での利  ⾼い収益性を達成・維持する  どういった事業を展開すべき business/competitive ミドル 益獲得 ためには︖ か︖ strategy  競争において優位に⽴つため  どの事業に注⼒すべきか︖ には︖ 機能別戦略 ロワー 各機能の効率化 マーケティング戦略 ⽣産戦略 etc 13 14 競争戦略(business strategy)の 企業戦略(corporate strategy)の 主要テーマ 主要テーマ  事業活動に関わる問題  企業の成⻑に関わる問題  利益を挙げるためには︖  成⻑を維持するためには︖  事業活動をどのように展開するのか︖  どういう⽅向に成⻑するのか︖  ⼀般戦略  事業領域の選択  コストリーダーシップ戦略と差別化戦略  どのような事業活動を展開するのか︖  事業戦略に対する2つの視点  事業間での資源配分をどうするのか︖  Positioning View︓外側にウェイトを置いた考え⽅  Resource Based View:内側にウェイトを置いた考え⽅ 15 16 講義スケジュール (⽬安) と参考図書の対応箇所 第2〜5回 企業の事業範囲 網倉・新宅 沼上  事業範囲の選択 「経営戦略入門」 「わかりやすい 講義内容 マーケティング 戦略」 第1回 企業戦略論の概要  事業活動とは 第2回 事業範囲の選択 第9章・第13章  事業範囲のとらえ⽅(タテとヨコ) 第3回 水平方向の事業範囲:多角化の種類と目的 第10章 第4回 水平方向の事業範囲:範囲の経済 第12章 第5回 垂直方向の事業範囲:垂直統合とアウトソース 第8章 第3章  多⾓化の種類と⽬的 第6回 製品ライフサイクル(1) 第8章 第3章  多⾓化の種類︓関連型と⾮関連型 第7回 製品ライフサイクル(2) 第11章 第6章  多⾓化の⽬的 第8回 複数事業のマネジメント(1):予算配分時の課題 第11章 第6章 第9回 複数事業のマネジメント(2):PPMの説明 第11章 第6章 第10回 複数事業のマネジメント(3):PPMを用いた分析  垂直統合とアウトソース 第11回 イノベーションへの対応(1):イノベーションの種類 第12回 イノベーションへの対応(2):組織イナーシャの源泉  Make or Buyの選択 第13回 経営戦略と組織(1):戦略と組織の相互作用 第14回 経営戦略と組織(2):組織構造・組織制度・組織文化と戦略 第15回 まとめと期末試験 18 第6〜7回 製品ライフサイクル 第8〜10回 複数事業のマネジメント  製品ライフサイクルの説明  資源(予算)配分の問題  製品ライフサイクルの背景  PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)  製品ライフサイクルと事業活動 19 20 第11〜12回 イノベーションへの対応 第13〜14回 経営戦略と組織  イノベーションとは︖  戦略を策定・実⾏する主体としての組織  戦略と組織の相互依存関係について  イノベーションが企業に及ぼす影響  機能別組織と事業部制組織  イノベーションへの対応に関わる課題 21 22 事業活動  モノやサービスを販売する。 アウトプットの販売  インプットをアウトプットに変換する。 技術的変換 企業戦略論 第2回  モノやサービスを購買する。 インプットの購買 事業範囲の選択 インプット スループット アウトプット 企業 材料 原材料市場 製品・サービス 材料 (供給業者:モノ) 製品 市場 東洋⼤学 経営学部 設備 サービス (顧客) ⼭⼝ 裕之 労働市場 (働く人:ヒト) 1 2 ⾝近なものについて調べてみよう 価値体系(value system)  特定の消費財がわれわれの⼿に渡るまでには、さまざま な活動が展開されている。 財の名称: 財の名称: 財の名称: 企業名: 企業名: 企業名:  われわれ消費者は、財・サービスから便益を得ている。 財の名称: 財の名称: 財の名称: (価値を⾒いだしている) 企業名: 企業名: 企業名: 財の名称: 財の名称: 財の名称:  企業は、その活動の⼀部を担っている。 企業名: 企業名: 企業名: 財の名称:  ビジネス・エコシステムとか、バリュー・ネットワーク 企業名: とか、いろいろな呼び⽅がある。  ほんとはちょっと違うけど・・・ 最終消費者:ぼくたち・わたしたち 3 4 事業活動の拡⼤ 企業ドメイン 多⾓化と垂直統合 産業財 産業財  企業が事業活動を⾏なう領域  事業ポートフォリオ全体の特徴付け 後方統合/ 川上統合  うちは何やってる会社か︖ 産業財 産業財  ⼀般に⾔う、ビジョン・ミッション・⻑期⽬標 タテ方向  企業の成⻑を左右するという意味で、その設定は、経営 の拡大 こうしたつながりを 陣にとって重要なタスク =垂直統合 産業財 産業財 通じて⾃然物から⼈ 前方統合/ ⼯物が作り出される 川下統合 ことで、 企業 豊かな⽣活が実現さ =事業ポートフォリオ 消費財 消費財 れている。 事業 事業 事業 事業 横方向の拡大 A B C D =多角化 5 6 企業ドメインの役割 ドメイン表現にもとめられる条件  企業のアイデンティティが定まる 人々まとめる  役割を果たすかどうかがポイント ↓  どの⽅向に多⾓化(成⻑)すべきか 現在および将来 ①狭過ぎず、広過ぎない  どのような能⼒を蓄積すべきか ②具体的すぎず、抽象的すぎない において 自社が取り組む/関わる  何に注意を払うべきか ③地に⾜をつけつつ、夢や理想を描く べきことについての 共通認識  企業(社員)の⼀体感が醸成される  5つのチェックリスト(沼上, 2008, p. 260)  共有された価値観や⽬的、判断基準  機能的表現(①・②)︓モノに基づいた表現を避ける  緻密性(②)  時間展開(②・③)  企業を取り巻く外部主体の理解の促進  資源配分の焦点(②・③)  ドメイン・コンセンサス  ドメイン・コンセンサスと夢(③) 7 8 ドメイン・コンセンサス ドメイン設定と事業戦略  企業の活動領域を、企業側が決めたところで、企業活動  企業は企業ドメインを⾃由に決められる訳ではない に関わる外部主体の合意・理解が無ければ、その活動は 成り⽴たない。  ドメイン・コンセンサスの必要性  例えば、⾼級ブランドと安売り品の両⽅を⼿がけることに 対して、顧客は理解を⽰さない。  各事業領域での勝算(事業戦略)  進出先の業界の魅⼒︓産業構造分析  企業のドメインについて、企業と外部主体の間で合意  保有する経営資源の進出先での有効性︓VRIO (コンセンサス)が達成されなければならない。  企業ドメイン(事業ポートフォリオ/企業範囲)の合理性(全社戦略)  多⾓化/事業リストラのメリット・デメリット  垂直統合/外部調達・委託のメリット・デメリット  事業間の相補性  外部環境との関係性 9 10 今回のまとめ  企業の活動  事業活動  インプットの調達  技術的変換  アウトプットの販売  事業活動の範囲  価値体系  ヨコの範囲とタテの範囲  企業成⻑と垂直統合・多⾓化  垂直統合(タテの範囲の設定) ↑ どこまで⾃社でやるかは何で決まるのか(第4回)  多⾓化(ヨコの範囲の設定) ↑ 何をやるかは何で決まるのか(第3回)  企業ドメインの重要性  ドメイン設定の必要性と注意点 11 多⾓化の種類  無関係な事業への多⾓化 ⾮関連型多⾓化  キヤノン 企業戦略論  電卓事業への参⼊ 第3回  関係がある事業への多⾓化 関連型多⾓化 多⾓化の種類と⽬的  技術的に関連  キヤノン 技術関連型  複写機・半導体露光装置・デジカメ 多⾓化  P&G  シャンプー・化粧品  マーケティング的に関連 市場関連型 東洋⼤学 経営学部  P&G 多⾓化 ⼭⼝ 裕之  紙おむつ・シェーバー  プリングルス 1 2 多⾓化の⽬的① 多⾓化の⽬的 リスクの分散  どうして企業は多⾓化するのだろうか︖  単⼀事業のリスク  外部環境の変化  多⾓化の合理性  リスクの分散(リスクヘッジ)  季節変動  成⻑機会の追求  季節がかわることで、企業の売上が変動する。  経営資源の有効活⽤  製品ライフサイクル  多⾓化には、資源の分散というデメリットがあるけれど、3つのメ  事業活動を⾏う製品が成熟・衰退期を迎えるとともに、企業の売 リットがある。 上・利益は減少してしまう。  メリットの⽅がデメリットよりも⼤きいのであれば、多⾓化すべき なのは当たり前。  経営陣に求められるのは、⾃社にとっての多⾓化のメリットとデメ リットをきちんと分析したうえで決断することであり、はやりに流 されることではない。 3 4 製品ライフサイクル 製品ライフサイクルと多⾓化  既存の製品市場が成熟期・衰退期を迎えると、  製品にも、⽣き物のように寿命を迎えるものがある。 ⼈間 乳幼児期 ⻘少年期 成⼈期 ⽼年期  既存事業の売上等は停滞・低下する。 製品 導⼊期 成⻑期 成熟期 衰退期 売上⾼ 典型的なライフ・サイクル  この時点で、製品市場が成⻑期を迎えている事業を保有 すれば、  企業規模の停滞・低下を補うことができる。 製品が販売されてからの経過時間 5 6 多⾓化の⽬的① 多⾓化の⽬的② リスクの分散 成⻑機会の追求  単⼀事業の場合、  成⻑を続けるうえで、企業は壁にぶつかる。  その事業の売上、業績が悪化すれば、  現在の事業は将来的に成熟期・衰退期を迎える。  企業⾃体の存続が危険にさらされる。  現在の事業が対象としている市場の規模には限界が存在す る。  こうしたリスクを減らすためには、  → 事業の停滞・縮⼩  複数の事業を持つこと(事業のポートフォリオを組むこ と)で、リスクを分散させる(リスク・ヘッジする)必  → 更に、そのことがもたらす悪影響 要がある。  社員の⾼齢化 → ⼈件費の⾼騰  e.g. 導⼊期・成⻑期の事業を持つ。  モチベーションの低下  e.g. 好況期に強い事業と不況期に強い事業  →有望な事業領域が存在する場合、そこに参⼊してお くことが望ましい。 7 8 多⾓化の⽬的③ 範囲の経済が⽣まれる理由 経営資源の有効利⽤  「範囲の経済」  既存事業における未利⽤資源の存在  複数の事業活動を同時に営むことによって、それぞれを独  → 新事業のコスト↓ ⽴で運営するときよりも、コストが割安になること。  未利⽤資源(遊休資源)の発⽣  ある事業を⾏うのに必要とされる資源が、その事業だけで は完全に利⽤できない場合 Ca  Cb  Cab  ある事業を⾏っているうちに⽣み出されてくる経営資源を 既存事業では利⽤しつくせない場合 9 10 「範囲の経済」の背景 「範囲の経済」の背景 (1)相補効果(コンプリメント効果)  2つの事業を同じ会社が運営することにメリットがある  2つの事業が互いに補い合うことで、ある経営資源をよ 理由 り完全に利⽤できるようになること  相補効果(コンプリメント効果)  2つの事業で利⽤されることで、ある経営資源の価値が無駄な  単⼀事業の場合、しばしば遊休経営資源が⽣じる く利⽤されること  遊休経営資源=使われずに残っている経営資源  相乗効果(シナジー効果)  2つの事業で利⽤されることで、ある経営資源の価値がより⾼  別の事業によって、この遊休経営資源がより完全に利⽤ くなること される  夏のスキー⽤品店でゴルフ⽤品を販売 (アルペン)  銀だこの店舗で、鯛焼きを販売 (ホットランド)  居酒屋のランチ営業  プロパンガス事業と飲料⽔宅配事業 11 12 「範囲の経済」の背景 範囲の経済が発⽣する状況 (2)相乗効果(シナジー効果) 生産 ・施設や人員の共通利用  情報的経営資源の同時多重利⽤と成⻑ ・間接費の分散 ・学習(経験曲線効果)の共通利用 ・一括的な大量仕入れ  情報的経営資源(技術・ブランド・関係性etc) 販売 ・流通経路・販売管理組織・倉庫の共通利用  ある事業で使われていても、他の事業で使うことができる ・関連製品の一括販売による効率性向上 (同時多重利⽤が可能) ・広告・販売促進・評判・ブランドの共通利用  利⽤によって増えることがある 投資 ・生産設備の共通利用 ・原材料の共同在庫  e.g.スキーリゾートで確⽴したブランドや接客技術によっ ・関連する製品の研究開発成果の一部利用 て、夏期の利⽤者が増⼤すること 経営/管理 ・組織の構築 ・規定や手続きの制定 ・人材の雇用 ・組織間の調整に関する問題の解決  ⼈的・物的・⾦銭的経営資源 ・経営上の意思決定における失敗の償い ・新しい顧客の信用を得るためのコスト  ある事業で使われると、他の事業で使うことができない 13 14 競争⼒の源泉 範囲の経済から⽰唆される 情報的経営資源(⾒えざる資産) 多⾓化パターン  情報的経営資源の特徴  範囲の経済を前提とすると、  情報という性質から「同時多重利⽤」が可能  (1) 既存事業の経営資源の未利⽤部分が活⽤できるような  カネを出しても買えないことが多い(⾮流動的) 新規事業  そのため、⾃分で作るしかない  (2) 既存事業で⽤いられている経営資源が、新規事業にお  作るのに時間がかかることが多い いても、同時利⽤できるような新規事業  ⾃⼰強化サイクル(好循環)が⽣まれる インプット 技術的なノウハウ  が有効な多⾓化パターンの⼀つとして考えられる 顧客の信用 ブランドイメージ 流通チャネルの支配力 事業活動 従業員のモラルの高さ 経営ノウハウ これら情報的経営資源は、事業活動のイン アウトプット プットでもあり、アウトプットでもある。 15 16 2種類のシナジー ダイナミック・シナジー  スタティック(静態的)・シナジー  事業展開のプロセスで新たに情報的経営資源の蓄積が⾏われ、  現時点で保有している事業の組み合わせによって⽣じる相 その蓄積された情報的経営資源をもとにして、また新たな事 乗効果 業展開が進められるという、経営資源のフィードバックの関 係  現在の事業間で、経営資源の多重利⽤が⾏われる。  このようなプロセスは、特に⽇本企業の⾏動によく観察された  ダイナミック(動態的)・シナジー  現在の経営資源では不⼗分な新領域に、ちょっと無理をして  現時点で保有している事業と将来の事業の組み合わせに 進出する。 よって⽣じる相乗効果  「ストレッチする」  現在の事業によって、将来の事業で多重利⽤できる経営資 源が蓄積・育成される。  進出先の新事業を通じて新たな情報的経営資源が蓄積され、 さらに新たな事業領域への進出が可能になるという好循環 17 18 多⾓化の理由を巡るトピックス① 多⾓化の⽬的と⽅向 〜多⾓化不要論〜  多⾓化には3つの⽬的(理由)が存在した。  ①「リスクヘッジ」と②「成⻑機会の追求」を⽬的とし て⾏われる多⾓化は不要である。  その⽬的に応じて、新たに進出する(事業)領域は異な  範囲の経済と違い、本業に+の効果をもたらさない。 る。  逆に、資源が他事業に投資されることで、本業にマイナス ではないか︖  ①と②は株主が⾏うことであり、企業がやらなくてもよい。 リスクの分散 本業を頑張ればよいという投資家の「論理」(多⾓化ディ 成長機会の追求 経営資源の有効利用 スカウント) 進出先の領域 異領域 近接領域  従業員や会社側からすれば、暴論︖  「ダイナミック・シナジー」が⽣じる余地が無くなる  ガバナンスを巡る根深い問題 非関連型多角化 関連型多角化 19 20 多⾓化の理由を巡るトピックス② 多⾓化の理由を巡るトピックス③ 〜範囲の経済という⼤義名分〜 「選択と集中」  「シナジーがあるから競争⼒を獲得できる」  「選択と集中」という近年のトレンド という「錦の御旗」の下、  特定の事業領域を選択し、そこに経営資源を集中させる (=専⾨化する)こと。  合理性(と戦略性)を⽋いた多⾓化が社内で承認され、  様々な事業を展開(≒多⾓化)すべきではない 実⾏に移されてしまう。  余ったカネの使い道としての多⾓化  新事業によるポストの創設  その背景およびロジック  不要な⼈員の処理  バブル期の反省  ミドルの暴⾛  各事業での競争を考えた場合、専⾨化が望ましい  経営者の⾒栄や夢、理想 多⾓化 トレードオフ 専⾨化(選択と集中) どっちが正解? 21 22 多⾓化の理由を巡るトピックス③ 企業成⻑ (多⾓化が発⽣する) のメカニズム 「選択と集中」 Penrose (1959)  「企業が置かれた状況に依存する」  経営資源と外部環境の状況 経営資源を有効 マッチング 経営資源を有効 活用する動機 活用する機会  専⾨化によって遊休経営資源が⽣じる  学習の経済  技術やブランドの蓄積・成⻑  専⾨化 → 競争地位 → 資⾦ 専門化 新用役の出現 専門化が成功する と多角化が必要に  これらの経営資源を有効活⽤する(多⾓化する)動機・ なり、 必要性が⽣じる 多角化をすると専 競争 多角化 門化が必要となる。 23 24 「選択と集中」と「多⾓化」 多⾓化の注意点 Penrose(1959) に⽴ち返ると・・・  多⾓化か、専⾨化か、という問題に対する絶対的な正解  多⾓化の⽬的を実現するには、きちんとした事業戦略の は存在しない。 ⽴案と実⾏が不可⽋。  企業 (経営陣) は、⾃社の置かれた状況 (経営資源と外部  リスクヘッジ・成⻑機会の追求・経営資源の有効活⽤ 環境) を鑑み、いずれが必要な段階なのかを判断しなけ  いずれの⽬的であれ、進出先の事業では、収益を挙げる必 ればならない。 要がある。  多⾓化→専⾨化→多⾓化→・・・というサイクルによって 企業は成⻑する。  事業戦略がきちんと考えられていない中途半端・無計画  重要なのは、このサイクルを健全に回すこと な多⾓化は失敗する。 ↑ 簡単に書くけれど、これがきわめて難しい  進出先の事業環境(産業構造)は、本当に魅⼒的か︖  有望に⾒える市場は、他者にとっても有望にみえる  健全に回らない場合・・・  ⾃社の保有している経営資源は、進出先の事業において持  過度な専⾨化 → 外部環境の変化 → 衰退 続的競争優位性の源泉となるのか︖  過度な多⾓化 → 各事業で競争劣位 → 衰退 25 26 価値体系(value system)  特定の消費財がわれわれの⼿に渡るまでには、さまざま な活動が展開されている。 企業戦略論  value system 第4回  value network 垂直統合とアウトソース  business ecosystem  われわれ消費者は、財・サービスから便益を得ている。 今回はとても難しいので頭をフル回転させて頑張ってください。 (価値を⾒いだしている) 元ネタ ・網倉・新宅(2011)『経営戦略入門』日本経済新聞社, 第12章. ・土屋(1984)『企業と戦略』廣済堂, 第3章. 東洋⼤学 経営学部  企業は、その活動の⼀部を担っている。 ⼭⼝ 裕之 1 2 垂直⽅向の範囲が異なる理由 垂直的範囲の検討  Make/Buyのいずれが合理的かは、個々の企業ごとに異なりえるし、時間の  どちらが⾃社にとって合理的か 経過とともに変化することもある。  現在の事業領域の上流/下流にある活動を  重要なのは、きちんと分析する(下のプロセスを踏む)こと。  ⾃分で⼿がける (make:内部調達/内製) か  それぞれにどういうメリット/デメリットがあるのかを整理し、  他社に委ねる (buy︓外部調達/アウトソース) か  それらに影響を与えうる要因を検討し、  Make/Buyのいずれがより合理的かを判断する。  流⾏に流されたり、伝統に縛られてはいけない。  どちらが合理的 (と考える) かは、直⾯する環境や保有  欧⽶企業では/ライバル企業では・・・、うちは⾃前主義を掲げており・・・ する資源に応じて異なる。  Make/Buyの合理性に影響を与える要因 Make Makeの ? ?  =合理的な垂直的範囲を規定する要因 の合理性 メリット Makeの ? Make/buy デメリット  そうした要因を検討したうえで、合理的な事業範囲 (垂 の ? 直⽅向への進出/撤退) を決定することが、経営陣には求 意思決定 buyの メリット められる。 どういったメリット/デメリットが Buy buyの あるのか、それらはどんな要因に影 の合理性 デメリット 響を受けるのか。 3 4 ① 情報の獲得と保護 垂直的範囲を左右する要因 (情報の獲得) Buy Make ① 情報の獲得と保護 × ○  現在の事業活動の展開にあたり、上流/下流活動に関する情報が 重要な場合がある。 ② 一般的な質 ○ ×  インプットを使いこなすために必要な情報(技術のトレンドなど)  アウトプットを販売するために必要な情報(顧客の好みなど) 上流 ③ 特異的な質(最適化) × ○ 活動 ④ 直接的な費用 ○ ×  情報には、暗黙的なもの/粘着的なものが存在する。 ⑤ 間接的な費用(取引コスト・内部管理コスト) △ △  暗黙知/形式知 (tacit knowledge/explicit knowledge) 自社  粘着的情報 (sticky information) Buy Make  ⾔葉や数字に置き換えることが難しく、伝達が困難な情報 メリット ②一般的な質 ①情報の獲得・保護  e.g.「ぬるぬる」動くスマホ・「かわいいデザイン」 下流 ④直接的な費用 ③専門的な質  その情報の獲得には、その情報が関わる活動を経験する必要がある。 活動 ⑤内部管理コスト ⑤取引コスト  learning by doing デメリット ①情報の獲得・保護 ②一般的な質 ③専門的な質 ④直接的な費用 ⑤取引コスト ⑤内部管理コスト  現在の事業活動の競争⼒を⼤きく左右する情報が、上流/下流に 存在し (の活動を通じて⽣み出され)、その情報が粘着的である ※ これらの要因は必ずしも独⽴していない。また網羅的でもない。 場合、内部化が望ましい これらの要因を1つの評価尺度で⼀律に測定することも不可能。 たとえば、上記メリット・デメリットを数値化し、その総合点の⽐較によって make/buyの優劣を判断する、という単純な分析はできない点に注意。 5 6 ① 情報の獲得と保護 ②と③ ⼀般的/特異的な質 (情報の保護)  現在の事業活動の競争⼒を⽀えていた情報が上流/下流  当該活動 (内容) の⼀般性/特異性 から流出する場合がある。  ⼀般的︓活動内容/アウトプットが他社と同質  e.g. 液晶ディスプレイ技術の流出  特異的︓活動内容/アウトプットが他社と異質 上流  製造装置メーカーを経由して 活動 上流 上流 上流 技術流出が⽣じた、と⾔われている。 活動 活動 活動  e.g. PC(CPUやOS)技術の流出 自社 競合  IBMのPC開発 A社 B社 C社  CPUをIntel 下流  OSをMicrosoftに委託 活動 下流 下流 下流 活動 活動 活動  特定の上流/下流活動を通じて情報流出が⽣じる可能性  ある事業活動が特異的である場合、上流/下流活動の⼀部 がある場合、当該活動を内部化することが望ましい (すべてではない)も特異的となりうる 7 8 ② ⼀般的な質 ③ 特異的な質  上流/下流活動に求める内容 (質) が⼀般的な場合、外部  上流/下流活動に求める内容が特異的な場合、内部調達 調達の⽅が望ましい。 の⽅が望ましい。  Make(内部調達)の場合  Make(内部調達)の場合  当該活動の規模が限定されている  取引が保証されていることに起因して、関係特殊的投資がおこ  競争圧⼒から守られている⽢え 活動の 競争 なわれる。 規模 圧力  Buy(外部調達)の場合  Buy(外部調達)の場合  当該活動の規模の⼤きさ  取引が保証されていないため、関係特殊的投資が⾏われない。  競争圧⼒ 一般的な質  上記の理由から窺えるとおり、常にそうとは限らない (条件付き)  上流/下流の活動において競争圧⼒が働いているか否か 9 10 関係特殊的投資 ④ 直接的な費⽤  活動Aが特異的な場合、 上流 活動  その活動の展開に直接関わる費⽤  活動Aに最適化した上流/下流の(特異的な) 活動は、他の事業活動(BやC)に対する適合  その費⽤は、規模の影響を強く受ける場合がある。 性を喪失する。 活動A 活動B 活動C  規模が⼤きいほど、  機械や⼈員の専⾨化  学習の経済性  活動Aに適した上流/下流の特異的な活動を 下流 展開するための投資=関係特殊的投資 活動  現在の活動を軸に上流/下流活動に進出する場合、それらの活 動の規模は、それらを専業とする企業と⽐べ、劣る場合が⼤ きい(とくに⼀般的な活動であるほど)  上流/下流の特異的な活動が展開される 取引の安定性が担保さ (関係特殊的投資が果たされる)ためには、 れない場合、関係特異 この場合、上流活動を内部調達 ・外部調達の場合 活動Aとの取引が安定的であるという保証 的投資は果たされない。 すべきか、外部調達すべきか? 上流活動(αから調達)の規模:300/月 が不可⽋。 =ホールドアップ問題 ・内部調達の場合 内製 供給業者α 自社の上流活動の規模:100/月 競合他社(αから調達)の上流活動:200/月 特異的な活動については、ホールドアップ問題が⽣じることで、外 部調達が難しい場合がある。この場合、上流/下流にある特異的な活 自社 競合A 競合B 100/月 100/月 100/月 上流活動が最大規模で展開されるのは、 動を⾃社で展開する必要が⽣じる。 11 外部調達の場合 12 ⑤ 間接的な費⽤ ④ 直接的な費⽤ (内部管理コスト・取引コスト) 単位あたり費用 内製 供給業者α  内部管理コスト 自社 競合A 競合B  当該活動に直接関与しない費⽤ 100/月 100/月 100/月  調整・コミュニケーションに係る費⽤  どのような活動を、どのように進めるのか。 最小最適規模は、技術(産業・時  何をどれだけ作るのか 代)に応じて異なる。 規模  特に、複数の⼈々が関わる場合、内部管理コストは増⼤す 最小最適規模 る。  直接的な費⽤に関して、外部調達が常に優れているわけではない。  当該活動が特異的である場合  この場合、当該活動を⼤規模 (⾃社調達量より⼤きい規模で)展開する主 体が存在しない可能性が⾼い。  当該活動が独占されている場合  この場合、当該活動のコストが低くても、調達価格は⾼くなる。  ⾃社調達量 > 最⼩最適規模 (minimum efficient scale) である場合 13 14 ⑤ 間接的な費⽤ まとめ (内部管理コスト・取引コスト) Buy Make 上流 上流 上流  取引コスト(transaction cost) 活動 活動 活動  取引がきちんとおこなわれるために必要なコスト ①情報の獲得と保護 × ○  取引を契約として明⽂化する  契約内容がきちんと履⾏されているか監視する A 取引 B ②一般的な質 ○ × 自社 ③特異的な質(最適化) × ○ ④直接的な費用 ○ ×  取引コストが⽣じる理由 下流 下流 下流  売買 (取引) される財について情報の⾮対称性が存在する場合がある。 ⑤間接的な費用(取引コスト・内部管理コスト) △ △ 活動 活動 活動  限定された合理性 (bounded rationality)  取引主体は、情報の⾮対称性を利⽤して、機会主義的⾏動 (opportunistic behavior) をとろうとする場合がある。  垂直的範囲の決定  価値体系のどこからどこまでを⾃社で⼿がけ、どこからを他社に委ねるか。  個々の上流/下流活動について①〜⑤の要因を検討し、make/buyの何れが合理的かを総 合的に判断しなければならない。  取引コストが⾼くなる場合  ①や④だけで判断しないこと。  取引される財が複雑な場合  活動内容やそれを取り巻く外部環境(PEST)によってmake/buyの優劣は変りうる。  財の測定が困難な場合(e.g.経験財)  この判断を誤れば、致命的な結果につながりかねない。  取引の不確実性が⾼い場合  e.g. 総合電機メーカー  機会主義を抑制する価値観・⽂化が薄い場合 15 16 今回の概要  製品ライフサイクルとは 企業戦略論  製品ライフサイクルの各段階の特徴に応じた事業戦略 第5〜7回 製品ライフサイクル  製品ライフサイクルの存在を前提とした場合の全社戦略 について  →次回︓製品ポートフォリオマネジメント(PPM) 東洋⼤学 経営学部 ⼭⼝裕之 1 2 製品ライフサイクルとは 製品ライフサイクルの形状  製品市場の規模の経時的変化  S字型を描く場合が多い。  S字曲線を描く(拡⼤→縮⼩)傾向がある。  しかし、常に綺麗なS字型を描くわけではない。  こうした市場規模についてのグラフは、事後的に明らかに  こうした市場の変化は、事業環境の変化を意味する。 なるものであり、事前の予測は実は難しい。  競争の状況  顧客の特徴  ただし、⼤まかな予測・現状把握は可能。  etc…  現状に基づく⾏動・戦略  将来の予測に基づく、対応の準備  こうした変化に応じて(を予測して)、企業は⾏動する (準備をする)必要がある。 3 4 製品ライフサイクルの背景 製品ライフサイクルの背景 〜S字曲線を描く理由︓その1〜 〜S字曲線を描く理由︓その2〜  製品やサービスを導⼊する時期は、顧客によって違うから。  技術⾰新によって、より優秀な製品が出現した場合、旧 来の製品が駆逐される (衰退期をむかえる) ことがある。 導入期 成長期 成熟期 衰退期  銀塩(フィルム式)カメラ 顧客層 イノベーター オピニオン・リーダー 後期(大衆)追随 遅滞者  → デジタルカメラ マニア 早期(大衆)追随者 者 (ラガード) 特徴 新しいもの好き 流行に敏感 様子見をする人 頑固な人  ポータブル・カセットプレーヤー 資金的に余裕 情報発信者  → ポータブルMDプレーヤー  → デジタルオーディオプレーヤー 5 6 製品ライフサイクルの背景 耐久財と製品ライフサイクル 〜S字曲線を描く理由︓その3〜  流⾏のあるような商品では、商品に対する飽きが出てく  耐久財の飽和=売上の低下という問題 るため。  製パン機やジューサー  これを避けるには、買い換えを促す必要がある。  タピオカドリンクや、ナタデココ、アロエ、⽣キャラメル  買い換えのコストを低下させる (販売価格を下げる)  顧客が学習すると、価格が下がるまで、購⼊を控えるように  耐久財の場合、普及によって市場が飽和するため。 なってしまう  ⼀家に何台も⾷器洗い機は必要ない  買い換えの便益を向上させる  1⼈に何台も携帯電話機は必要ない  レンタル制/サブスクリプション制にする  期限付きにする  更新の度に売上が挙がる  新しい製品の性能を向上させる  顧客が性能を求める必要がある。  製品の耐久性を下げる(=製品の魅⼒は低下) 7 8 製品ライフサイクルの段階別の特徴と それに応じた戦略 導入期 成長期 成熟期 衰退期 [特徴] 特徴 低水準 急速上昇 緩慢な上昇 下降 僅か or 低水準 or 製品ライフサイクルの段階別の特徴と 利益 最高水準 下降 マイナス ゼロ それに応じた戦略 顧客 革新者 マスマーケット マスマーケット 遅滞者 1.導⼊期 競争 殆どなし 増大 競合者多数 減少 [競争] 戦略の焦点 市場の拡大 市場浸透 シェア防衛 撤退時期 ブランドロイ ①導⼊期の特徴 強調点 製品の認知 ブランド選好 選択的 ヤルティ ②導⼊期における企業の課題 流通 未確立 集中・強化 集中・強化 選択的 ③導⼊期における戦略の定⽯ 価格 高水準 徐々に低下 最低水準 【出典】沼上幹「わかりやすいマーケティング戦略:新版」有斐閣アルマ 9 10 ① 導⼊期の特徴 その1 ① 導⼊期の特徴 その2  売上⾼︓ 少ない  競争 ︓ 緩やか  他の企業の関⼼を引かない。  利益︓ マイナス or 僅か  市場規模(売上⾼)や利益の⼩ささゆえ  関⼼を引いたとしても、様⼦⾒をする企業もいる。 ←費⽤負担が⼤きいため  その製品(市場)が失敗するリスクがあるため。  電気⾃動⾞や、燃料電池(エネファーム)etc  投資の必要性  市場を拡⼤させるための投資  ⽣産や流通の体制を整えるための投資  顧客 ︓ イノベーター/マニア  新しいもの好き(新しいことに価値を⾒出す)で、資⾦的 余裕がある⼈達  費⽤  企業にとって魅⼒的な顧客層だが、絶対数が少ない。  経験の浅さゆえの⾼コスト(←学習の経済性) 11 12 ② 導⼊期における企業の課題 普及の阻害要因  普及のボトルネックを取り払う  購買者側に存在する阻害要因  製品認知の低さや、偏⾒など  導⼊期における最⼤の問題は、市場規模が⼩さすぎること。  ⽣産者側に存在する阻害要因  ⽣産体制が未整備(⽣産量・不良率)  市場を拡⼤するためには、普及のボトルネック(最も⼤き  販売体制の不備 な阻害要因)を探して、それを取り払わなければならない。  ⾼価格  その他の阻害要因  成⻑期に⾄らない、ということは多々ある。  他の利⽤者がいないこと(ネットワーク外部性)  補完財が未発達 13 14 購買者側の阻害要因 ⽣産者側の阻害要因  購買に⾄るまでの意思決定プロセスは、どこで⽌まってし  ⽣産体制が未整備 まっているのか。  ⼯場の設⽴  AIDMAモデル  購買の意思決定に関するモデル  ⼈材の確保・育成  歩留まりの低さ これらの要因を取り除くための 存在を知らない Attention:注意 投資によって、導⼊期の費⽤は  販売体制の不備 偏見 ⼤きくなってしまう。  流通網の確⽴ Interest:関心 これらの要因 価値(効用)を感じない  ⼈材の確保・育成 を取り除くため Desire:欲望 に費用(宣伝  ⾼価格 欲しいことを覚えていない 広告費等)が ←これについては後で かかる。 Memory:記憶 売っていない Action:行動(=購買) 【出典】沼上幹「わかりやすいマーケティング戦略:新版」有斐閣アルマ 15 16 その他の阻害要因 その他の阻害要因 a) 他の利⽤者がいない b) 補完財が未発達  ネットワーク外部性  単独ではなく、他の製品やサービスと組み合わされるこ  製品やサービスには、利⽤者が増えることによってその価 とで、価値を増すものがある。 値が増すものがある。  ある製品の価値を増やしてくれる財(製品・サービス)を  ファクシミリの例 補完財という。  下の悪循環からどう抜け出すか。  ビデオデッキと、ビデオレンタルサービス  スマホとアプリ 利用者(購買者) 価値が低い が少ない 17 18 補完財の提供を巡る選択肢の 補完財を巡る難しい問題 メリット・デメリット  市場に⼗分な補完財が提供されていない場合、 具体策 コスト 失敗時の コントロー 利益の専有 リスク ル可能性 可能性  ⾃社の製品の価値を⾼めるうえで、 ⾃社で補完財を 新事業 × × ○ ○  補完財の供給を増やす必要がある。 提供する 買収 ⾼ ⾼ ⾼い ⾼い  2つの選択肢 他社に補完財を 提携 ○ ○ × ︖ 提供して貰う 低 低 低い 場合による  ⾃社で補完財を提供する  他社に補完財を提供してもらう 19 20 利益の占有可能性 ② 導⼊期における企業の課題 (補完業者との協争)  顧客は、機能の束としての財に価値を感じ、購⼊する。  普及のボトルネックを特定し、それを取り除くシナリオ  ある顧客が、ルート (地図) 検索できるスマホに10万円の価値を感 じ、購⼊する場合、 を策定・実⾏する  10万円の価値を創造する点において、スマホSと地図アプリSは協⼒ 関係  この10万円の売上 (価値) の配分を巡り、スマホSと地図アプリSは  時間の経過によって、市場が⾃動的に成⻑するわけでは 競争関係 ない。  以下の場合、10万円のうちより多くを獲得するのはどちらか︖ スマホ 地図アプリ サプライヤ サプライヤ Apple Google samsung apple Sony 補完財の供給が特定の企業に独占される場合、 当該企業が相対的に高いパワーを握ることで、 利益の占有可能性は著しく低下する 21 22 ③ 導⼊期における戦略の定⽯︓2つの価格政策 経験(曲線)効果 上澄み価格政策と浸透価格政策 上澄み価格政策 浸透価格戦略  「累積⽣産量が2倍になる毎に、単位あたりコストが⼀  ①プロダクト  ①プロダクト 定の割合で低下する」という傾向  本質サービス 分かりやすく・  本質サービス 分かりやすく・  累積⽣産量・・・それまでに作ってきた製品の数 使いやすく 使いやすく  単位あたりコスト・・・1個作るのにかかる費⽤  ⼀定の割合 = 習熟率  ②プロモーション  ②プロモーション  説明重視のプッシュ  プル  e.g. 習熟率80%  1000個・・・1000円  ③プレイス  ③プレイス  2000個・・・800円(=1000x0.8)  閉鎖型チャネル政策  開放型チャネル政策  4000個・・・640円(=800x0.8)  ④プライス  ④プライス 4000=1000×22  ⾼価格  低価格 1000×(0.82)=640 23 24 経験曲線を踏まえて・・・ 経験(曲線)効果が⽣じる理由 2種類の価格政策 (pricing strategy) について  経験(値)を積むことで、より効率的・有効的な⽣産活  上澄み価格政策 動が可能になる。  コストを上回る(利益が出る)価格を付け、コストの低下  習熟や学習によって労働者の能率が向上 に伴って価格を下げる。  仕事・作業のやり⽅が⼯夫される(e.g. 専⾨化)  価格競争に陥る前に、利益を稼いでおく戦略  ⼯程の改善  市場「⼀番乗り」の企業がよく使う  ⽣産設備を効率的に利⽤できるようになる  資源をより有効に活⽤できるようになる(ムダが少なくな  浸透価格政策 る)  ⾚字覚悟でたくさん売る(作る)ことで、ライバルに対し  製品の標準化によりコストダウンが進展 てコスト優位に⽴つ。  製品設計が改善される  価格競争に陥ったとしても、他社よりも利益が出るようにすべ く、⾚字覚悟でたくさん作り・売る戦略。  ⼆番⼿以降の企業がよく使う 25 26 経験効果に関する注意点  ヒトの学習に由来するところが⼤きい  つまり、労働集約的な作業や複雑な⼯程を持った製造業で ⾒られることが⼤きい  ただし、資本集約的な産業やサービス業で発⽣しないわけ ではない。  技術変化が発⽣した場合、それまでの学習の蓄積がリ セットされてしまう。  例︓⾦銭登録機 27 28 ① 成⻑期の特徴 その1  売上⾼︓ 急激に上昇  普及を阻害していた要因が取り除かれる 製品ライフサイクルの段階別の特徴と それに応じた戦略  利益︓ 最⾼⽔準 2.成⻑期  必要な費⽤が減少する  投資が落ち着く(ただし、依然として額は⼤きい)  経験曲線効果が働き始める  (価格)競争による低価格化はほとんど発⽣しない。 ①成⻑期の特徴 ②成⻑期における企業の課題 ③成⻑期における戦略の定⽯ 29 30 ① 成⻑期の特徴 その2 ② 成⻑期における企業の課題  競争 ︓ 激化  ライバルよりも速いペースで成⻑する  関⼼の無かった企業や、様⼦⾒の企業が参⼊ =市場の成⻑率よりも、⾼い成⻑率を達成する  市場規模(売上⾼)や利益が増加したため。  将来の成熟期・衰退期の競争において決定的な意味を持つ  市場が頓挫するリスクが減少するため。  新規顧客の奪い合い 一見、成功してい 新規顧客100 → 価格競争というよりは差別化競争 そうだけど・・・ の奪い合いの 100 75% 175 結果は、  顧客 ︓ マスマーケット Pink 25  オピニオンリーダー: 流⾏の発信者 100 25%成長 125  早期⼤衆追随者 Blue 75 200 50%成長 300 Pink社の相対的な (対Blue社) 競争地位は、低下している。 31 32 市場よりも⾼い成⻑率を 市場よりも⾼い成⻑率を 成⻑期に達成しなければならない理由 成⻑期に達成しなければならない理由  差別化の余地は徐々に減っていく(コモディティ化)  コモディティ化が進む  技術-需要の余地 = 時間がたつほど、コスト競争⾊が濃くなる  顧客の変化  規模の経済性・学習の経済性(経験曲線効果)を踏まえれ ば、この時期に⼤きなシェアを確⽴できるか否かが、将来 性能に敏感な顧客 マニア/ において決定的な意味を持っている。 の要求水準 イノベーター  企業のシェアは、成⻑期でほぼ確定する。 製品性能 性能向上( の余地 平均的な顧客の 早期大衆追随者  成⻑期以降においてシェアを向上させるためには、ライバ 要求水準 後期大衆追随者 ルの顧客・流通網を奪う必要がある。 価格に敏感な顧客 製品差別化) の要求水準 ラガード 時間 33 34 市場よりも⾼い成⻑率を達成するには 成⻑期における注意点  ⾃社ブランドに対する選好を獲得する  成⻑期における投資について =ブランド選好の確⽴  「⾏き過ぎに注意せよ」というもっともな考え  市場が広がっており、競争相⼿との直接対決が少ない  本質的サービス ← 差が付きにくくなる  ⾏きすぎた投資は、後に構造不況をもたらす恐れがある  ⾼い固定費  ⾼い退出障壁  補助的サービス  投資の意思決定の基準  ①対前年⽐  ②当社内⽐(他事業部⾨)  ③他社⽐ 35 36 ③ 成⻑期における戦略の定⽯ (上澄み価格政策→浸透価格政策)  ①プロダクト  補助的サービスの充実・差別化  本質サービスでは、差が付きにくくなっている。 製品ライフサイクルの段階別の特徴と  ②プレイス それに応じた戦略  閉鎖型→開放型への転換 3.成熟期  製品の販売量が伸びる  ③プロモーション  マスコミ利⽤のプル ①成熟期の特徴 ②成熟期における企業の課題  ④プライス ③成熟期における戦略の定⽯  価格低下 37 38 ① 成熟期の特徴 その1 ① 成熟期の特徴 その2  売上⾼︓成⻑率鈍化  競争︓⼀定もしくは減少  10パーセント未満  顧客の奪い合いという意味合いが強くなり、  競争から脱落する企業も出てくる  利益︓減少傾向  価格の低下(コモディティ化の進展)  2種類の競争状況  競争型  顧客︓マス・マーケット(後期⼤衆追随者)  ⾃社の売上げを伸ばすため、ライバルの顧客を奪う  共⽣型  価格競争に陥ることを互いが避けようとする = 市場における 棲み分けを⽬指す 39 40 ③ 成熟期における戦略の定⽯ ② 成熟期における企業の課題 市場地位別に異なる事業戦略 その1  ブランド・ロイヤルティの確⽴  ⾸位企業(リーダー)  ターゲットは市場全体(フルカバレッジ)  特定のブランドを顧客が繰り返し購⼊する忠実さ  同質化とコスト・リーダーシップ  顧客が⾃社のブランドから離れないように  = ライバルに顧客を奪われないように  2番⼿企業(チャレンジャー) ターゲット 戦略  ニーズの満⾜化と低価格化 市場全体 リーダーの顧客奪取を狙った  ⽐較検討の便益よりもコストが相対的に⼤きくなると、顧客は 攻撃的 メリハリを効かす= 製品差別化 ⽐較検討をしなくなる。 セミ・フルカバレッジ リーダーが対象としてい 共⽣的 棲み分けを狙った差別化 ないセグメント 41 42 ③ 成熟期における戦略の定⽯ 市場地位別に異なる事業戦略 その2  フォロワー  ターゲット︓ リーダーやチャレンジャーが対象としてい ないセグメントに集中 製品ライフサイクルの段階別の特徴と  戦略︓ コスト・リーダーシップ戦略 それに応じた戦略 4.衰退期  ニッチャー  ターゲット︓ リーダーやチャレンジャーが対象としてい ないセグメントに集中 ①衰退期の特徴  戦略︓ 製品差別化 ②衰退期における企業の課題 ③衰退期における戦略の定⽯ 43 44 ① 衰退期の特徴 ② 衰退期における企業の課題  売上⾼︓ 減少  2つの問題の解消  製品のコモディティ化  利益︓ 低下  市場の縮⼩  それに伴う、供給過多  コモディティ化の進展 価格競争の激化  供給量(⽣産能⼒)に⽐べて需要量が少なくなっている。  供給過多  競争︓ 減少  脱落する企業が出ることで、落ち着いていく  いくつかの選択肢(戦略の定⽯)が存在する  顧客︓ 遅期⼤衆追随者(laggard) 45 46 ③-1 ③ 衰退期における戦略の定⽯ ポジションの変更  ポジション変更  市場の中で、成⻑余地のありそうなところに経営資源を  成⻑余地のあるセグメントに経営資源を集中させる 集中させ、そのセグメントの成⻑を促す。  イノベーション  例えば  市場の再活性化(脱成熟)を狙う  スーパーカブ︓ 国内市場 → 海外(発展途上国)市場  ⽩⿊テレビ︓モニター  撤退  継続 47 48 ③-2 イノベーション イノベーションの種類  技術と市場の結びつき⽅を変えることで、製品ライフサ 市場に関する要因の新しさ イクルをもう⼀度成⻑段階に変えることが出来る。 漸進的(温存) 劇的(破壊)  従来の技術を、新しい市場で使う 通常的 ニッチ創造的 = ニッチ創造型・イノベーション 漸進的 (Regular) (Niche Creation) (温存) 技術に イノベーション イノベーション  新たな技術を、従来の市場で使う 関する = ⾰命的・イノベーション 要因の ⾰命的 新しさ アーキテクチャル 劇的 (Revolution) (Architectural) (破壊) イノベーション  新たな技術を、新しい市場で使う イノベーション = アーキテクチャル・イノベーション Abernathy and Clark (1985) 49 50 ③-3 ④-4 残存 撤退  ⾮常に難しい意思決定  残存者利益の追求  社内外からの反対  競合企業が撤退すれば、競争は無くなり、⾃由に価格設定  従業員 を⾏えるようになる。  販売先・供給業者・補完的企業  緩やかな衰退の場合、更に難しい  業界の⾃主再編  ずるずる⾏く危険も  M&A(Merger and Acquisition)  撤退しないことが良い場合もある  国内携帯電話産業  残存者利益  三菱(撤退)  三洋→京セラ  NEC・⽇⽴・カシオ 統合へ 51 52 ライフサイクルの段階 項目 導入期 (Introduction) 成長期 (Growth) 成熟期 (Maturity) 衰退期 (Decline) 残存・撤退に関して 1 市場規模と成長 規模は小さいが急成長 急速に成長する 大きいが成長率は低い 成長率はマイナスで規模は縮小傾向 2 顧客の特徴 イノベータ,初期採用者(early adopter) 早期マス(Early Majority) 後期マス(Late Majority) ラガード(Laggard) 顧 3 顧客のニーズ 商品としての完成度,独特の特徴 性能 性能/価格 低価格 客 4 顧客の知識 低水準 中程度 高度 高度  企業にとって、根本的な問題解決にはならない。 製 5 製品の複雑性 高水準 単純化が進む 低水準:標準化・コモディティ化 低水準 品 当初はバラエティが増え,しかる後に少  事業規模の縮⼩を意味する 6 製品バラエティ ほとんど種類はないが,徐々に増える 数の支配的設計(dominant design)に絞 セグメンテーションと専門化が進む 減少傾向 られる 小規模専門店 7 流通 多様なアウトレット スーパーストア,直販 流通コストの最小化が目指される 顧客への教育(トータル・ソリューション) 8 企業数 少ない.急速に増える 多数 淘汰が起こり,数が安定するようになる 少ない.退出が起こる  企業成⻑を維持するためには、抜本的な⽅策が必要 9 新規参入 多数(立ち上がらない場合は少数) 中程度(成長期に入る頃に多数) 少ない 退出が起こっているので,マイナス  新事業(導⼊期・成⻑期)の開始 すでに以下のレピュテーションのある企業あるいはこの期の間に そのレピュテーションを構築する: すでに以下のレピュテーションのある企業あるいはこの 期の間にそのレピュテーションを構築する: 品質の高さ,低コスト生産と流通,専門 低いコストやニッチ市場に特化しているなどの 10 市場リーダーの特徴 革新的,顧客教育・啓蒙に優れる,柔軟,トー 企 マーケティングがうまい,品質の高い生 性などのレピュテーションをもつ レピュテーションをもつ タル・ソリューション(顧客の抱える問題を全部  ただし、衰退期を迎えてからでは⼿遅れの場合も 業 産 解決する) 11 投資 大規模 大規模 低水準 ハーベスト and/or 売却 12 平均費用 高い,低下傾向 中程度,低下傾向 低い 低い 低く,そのうちマイナスに転ずる(残存者利益を 13 利益 マイナス 低いが急速に改善する 高くなるが,その後減少する 得る場合はプラスのまま) 国際貿易 輸入品は少ない 初めは輸出傾向が強いが,後に輸入品 14 輸出の増大 輸入 (国内への輸入品の侵蝕) (発明が自国内の場合) が入ってくる ・顧客が本当に欲しがっているものは何か ・マーケティング全般 ・コスト削減の方法 ・生産能力の削減 ・顧客がどれほど知覚しているか 15 情報収集 ・競争相手との相対的な性能 ・新しい市場の探索 ・新しい用途 ・顧客は満足しているか 戦 ・製品改善の方向と方法 ・競争の脅威 ・新しい特徴 ・リピートしているか 略 ?

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