取引費用経済学と企業の境界 PDF

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東洋大学

HACHISU AKIRA

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取引費用経済学 企業の境界 経済学 ディズニー

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この資料は、取引費用経済学と企業の境界に関する講義資料です。新古典派経済学と企業、エージェンシー理論、ロナルド・コースなど、関連する概念や理論について説明しています。

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本日の講義内容に関するノーベル経済学者たち 第8回講義 取引費用経済学と企業の境界 オリバー・ウィリアムソン...

本日の講義内容に関するノーベル経済学者たち 第8回講義 取引費用経済学と企業の境界 オリバー・ウィリアムソン (2009年) ロナルド・コース オリバー・ハート ベント・ホルムストローム (1991年) (2016年) ジャン・ティロール(2014年) 組織経済学 2 企業の範囲を考えるための事例︓ディズニー 1.新古典派経済学と企業 (1)生産関数としての企業 マネジメント料 ウォルト・ディズニー・カンパニー ライセンス料 伝統的な経済学における企業 直接運営 (所有関係なし) 運営するユーロディズニーの 労働と資本を投入すれば、製品やサービスを産出する「 」 株式の40%を所有 K=1,2,… 資本 産出 投入 Y=f (K,L) Y=1,2,… ディズニーランド ディズニーランド・パリ 製品・サービス (米カリフォルニア) (現ディズニーランドパーク) L=1,2,… 企業=生産関数 東京ディズニーリゾート ※慢性的な赤字が続いている 労働 3 (2)伝統的な経済学の⼈間モデル︓経済⼈仮説 (3)伝統的な経済学の目的︓ 市場 メカニズムの理解 伝統的な経済学における経済主体 需要(買うこと)と供給(売ること)から、市場で最適な価格や ① 完全情報 数量が決まることを理解する 価格 あらゆる情報を完全に把握している 供給曲線 生産者 高ければ、いっぱい ② 完全合理性 作って売る 完全な計算能⼒や認知能⼒を持ち、合理的に意思決定をする それぞれが合理的・利⼰的に⾏動すれば ③ 利⼰主義 150 需給均衡点 市場の資源配分は効率的になる ⾃⼰利益の追求のみを目的とし、意思決定を⾏う 需要曲線 安ければ、いっぱい 消費者 買う 価格のみに反応し、⾃分の損得だけを重視して意思決定を⾏う 超合理的な⼈間を想定している 4 O 100 数量 5 (4)伝統的な経済学の世界 (5)20世紀以降の現実の企業と経済 市場に点在する無数の企業、無数の消費者による取引が⾏われている ◆取引相手の候補すべてについて、完全に知っているわけではない 企業 企業 企業 消費者 どの企業に部品生産を依頼するか、 ︖︖︖ 企業 技術⼒・品質・納期などの⾯から 信頼できる相手を探す必要あり 企業 企業 企業 消費者 企業 ◆ある製品やサービスが、多数の 企業 ・・・ ・・・ ・・・ 企業の市場取引によって供給さ ・・・ ・・・ れているわけではない 組⽴メーカー 企業 企業 ⾃社で部品から生産してしまえば、 ︖︖ 企業 企業 消費者 取引先を探したり、⾯倒な契約を 部品メーカー 組⽴メーカー 小売 結ばなくてすむ 部品メーカー 6 7 2. エージェンシー 理論︓ (2)情報の非対称性とエージェンシー関係 理論の前提(仮定) 取引をおこなう経済主体の間には、情報の量 情報の非対称性 と質において差がある ① 情報の⾮対称 ︓ 情報の量と質において差がある者同⼠の間で、 契約を結ぶ経済主体の間には、情報の量と質に おいて差がある エージェンシー関係 特定の⾏動を遂⾏するよう契約が結ばれよう ② 限定合理性 ︓ としているとき、あるいは契約が結ばれてい るときの関係 契約を結ぶそれぞれの経済主体は、限定合理性 ゆえに、相手の質や⾏動に関する完全な情報を 情報 にある側の経済主体 獲得できない 例)雇用契約時の雇用主︓労働者の質を知らない ジェンセン 例)保険契約時の保険会社︓保険申込者の質を知らない 解決方法 マイケル・. 情報 にある側の経済主体 ①⾏動を監視する( モニタリング ) (ハーバード大学教授) 例)雇用契約時の労働者︓⾃分の質を知っている ②適切な インセンティブ 設計(制度・組織設計) 8 例)保険契約時の申込者︓⾃分の質を知っている 9 雇用契約を結ぼうとしているとき 雇用契約を結んだ後 雇用契約で権限関係が生まれる訳ない 雇用契約を実⾏するか否かの履⾏問題 真⾯目に⻑く働ける 雇ってください︕ あたらしい技術を ⼈が欲しいんだよね コミュ⼒抜群です 勉強して身に付けて はい︕分かりました︕ 本当かな… おいて 体⼒あります 辞めません 利害 の不⼀致 真⾯目です エージェンシー 関係 忍耐⼒の塊です 企業を成⻑ 履⾏ 問題 楽した方が得 労働者 させたい 雇用主(企業側) 雇用主 雇用契約 従業員 プリンシパル エージェント プリンシパル エージェント (情報劣位) (情報優位) 10 (情報劣位) エージェンシー関係 (情報優位) 11 (3)エージェンシー理論 3.ロナルド・コース︓「 企業の本質 」(1937) 理論の前提(仮定) (1)ロナルド・コース ①情報の非対称性 主要業績 契約を結ぶ経済主体の間には、情報の量と質に おいて差がある 「 」(1937) ②限定合理性 なぜ企業組織がうまれるのかを経済学的に論じた 契約を結ぶそれぞれの経済主体は、限定合理性 ゆえに、相手の質や⾏動に関する完全な情報を 「社会的費用の問題」(1960) 獲得できない 「コースの定理」と呼ばれる定理を提唱 解決方法 マイケル・ジェンセン (ハーバード大学教授) ①⾏動を監視する(モニタリング) 1991年ノーベル経済学賞を単独受賞 ロナルド・コース ②適切なインセンティブ設計(制度・組織設計) 12 (1910-2013) 13 (2)コースの問い︓Make or Buyの問題 企業の範囲を考えるための事例︓ディズニー なぜすべての取引が市場で 原材料メーカー ⾏われるのではなく、企業 市場取引 マネジメント料 ウォルト・ディズニー・カンパニー ライセンス料 内に組織化されるのか︖ 直接運営 部品製造 (所有関係なし) 内部取引 運営するユーロディズニーの 株式の40%を所有 企業の 企業の境界はどのように 組⽴て 境界 決まるのか︖ 内部取引 販売 ︓⾃社で作るか、他社から 買うか(市場を利用するか)の線引きの問題 市場取引 ディズニーランド ディズニーランド・パリ 消費者 (米カリフォルニア) (現ディズニーランドパーク) 東京ディズニーリゾート Make or Buy ※慢性的な赤字が続いている 14 アパレル産業における 家具業界における製造小売 (Speciality store retailer of Private label Apparel ) 家具業界では製造小売を採⽤する企業が成⻑ 日本では製造小売業と呼ばれることもある。素材の調達、企画、製造、 物流、在庫管理、店舗販売など、これまでは様々な企業による分業で 成⽴していた業務を、メーカーがすべて⾏うシステム SPAの代表的な企業として、ZARA、H&M、ユニクロがある (3)企業の本質 4.オリバー・ウィリアムソンの取引費用経済学 他社から購入する場合(市場取引)、 市場を利⽤する 費用が発生 (1)ウィリアムソンの取引費用経済学(Transaction Cost Economics) 取引相手を 探す 費用 取引費用(byウィリアムソン) R.コースの理論を精緻化させた 取引相手と 契約を結ぶ 費用 → どの取引先が優れた技術を持ち信頼できるのか︖事前調査が必要。 → 契約書を取引のたびに作成する。弁護⼠に契約書作成を依頼する。 取引費用経済学を提唱 取引相手の⾏動を 監視する 費用 ・・・限定合理性、機会主義、 → 契約通りの⾏動を相手が⾏っているか、監視する必要がある。 情報の非対称性、資産特殊性 市場を利用する費用が高ければ、市場取引を内部取引に置き換え、 組織経済学の基礎を構築 によって調整できる内部組織化を選ぶ(市場取引から内製へ) Organizational Economics オリバー・ウィリアムソン (1932-2020) 経営者の管理能⼒の限界が、企業拡大の限界になる 2009年ノーベル経済学賞を受賞 15 16 (2)取引費用経済学の仮定 (3)取引費用が発生・増加する要因 取引をおこなう経済主体間の情報量には、その量と 情報の偏在 ⼈間の要因 環境の要因 質において差がある ⼈間の要因 「契約⼈ 仮説」 限定合理性 不確実性・複雑性 情報の⾮対称 性 経済主体は合理的に追求しようとするものの、 それは限られた範囲内での合理性である(≒サイモン) 機会 主義 相手に損失を与えてでも⾃⼰利益を追求しようとする ⼈間の性質(バーナードの概念とは ) 情報の偏在 環境の要因 取引相手は無限に存在するわけではなく、少数 取引の少数性 に限られるかもしれない(外部機会がない) 機会主義 少数性 不確実性・複雑性 将来の取引については何が起こるか分からない 17 18 限定合理性 不確実性・複雑性 機会主義 少数性 その部品、 どうしようかな〜 ①合理性に限界のある者の間で、複雑で不確実な状況を ①部品を生産できる取引相手が少数で 売ってください 他あたれば︖ 他にないんです… 把握するのは難しい あれば、組⽴メーカーはその部品 メーカーに頼らざるをえない ②将来起こりうるすべての状況を完全に予測することは できず、当事者間の契約に、不確実な将来の状況を書 ②部品メーカーは交渉⼒を巧みに利用 くことはできない(必然的に契約は 不完備 になる) し、⾃社に有利な契約を結ぼうとする 交渉⼒なし 交渉⼒あり 部品 (組⽴メーカーは不利な契約を結ぶ︖) 将来の不確実・複雑な状況に関して、合理性に限界がある 者同⼠が契約を結ぶには契約の度に取引費用が発生する 組⽴メーカーは、部品メーカーと契約するのが高くつく (市場を利用すると、取引費用が高くなる) 内部組織化すれば契約は不要(取引費用を削減) 内部組織化すれば契約は不要(取引費用を削減) 19 20 (4)内部組織化のメリット︓取引費用を削減できる 機会主義 情報の偏在 不確実性・複雑性 市場取引であれば、 少数性 ①取引先の情報を獲得しにくい ①将来の状況は不確実・複雑で予測しにくい 市場契約 ②相手は⾃社の利益を追求しよう 情報優位な経済主体は、戦略的(機会主義的)に情報を隠すなど、 部品 と機会主義的に振舞う可能性 情報操作を⾏い、⾃分に有利な契約を結ぼうとする余地がうまれる 他社の⼈(取引先) ③依頼するたびに契約を締結 ②取引当事者の間に情報は等しく存在しない(情報の偏在 or 情報の非対称性) 取引費用が発生 知らない相手であれば、いっそう情報の非対称性は高くなる 社⻑ 内部組織であれば、 ③他の取引先を最初から探し、調査するのも手間がかかるので、 ①部下の情報を獲得しやすい 今知っている範囲の取引先と交渉する傾向にある(少数性を助⻑) 雇用契約 (内部組織) ②社⻑と部下は同じ組織に所属 不確実性・複雑性という環境要因につけこみ、⾃分だけの利益を追求するよう → 道徳的な感情が生まれやすい な機会主義的な情報操作が⾏われる可能性がある。よって取引先は、情報を得 部品 ③雇用契約さえ結べば命令でOK やすい少数の相手に絞られる傾向につながり、相手の交渉⼒を強める。 部下 取引費用を節約 21 22 (5)内部組織化のデメリット︓ 費用が発生する 組織が大きくなりすぎると 管理しきれません︕ 制組織 組織の 組織の管理費用を 大規模化 削減する工夫 中央本社 ・・・ A製品 B製品 C製品 調整必要 部下1 部下2 部下10 購 生 販 研 購 生 販 研 買 産 売 究 買 産 売 究 開 開 A事業部 発 C事業部 発 23

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