モジュール化と企業の境界 PDF
Document Details
Uploaded by InfluentialDeciduousForest4587
東洋大学
蜂巣 旭
Tags
Summary
この資料は、モジュール化と企業境界についての解説です。自動車やPCの機能と構造を例に、製品アーキテクチャとモジュール化の関係について説明しています。
Full Transcript
1.イントロダクション 第11回 マクロ組織論 (1)⾃動⾞の機能と構造︓ モジュール化と企業の境界...
1.イントロダクション 第11回 マクロ組織論 (1)⾃動⾞の機能と構造︓ モジュール化と企業の境界 ⾃由に部品を組み合わせて 製品を作ることができない 経営学部 蜂巣 旭 Akira HACHISU 望む性能が発揮できないばか LEXUSのボディ Porche 911 のエンジン りか、危険 全体(システム)の機能を 考えた上で、各部品が設計 され、製造されているから インテグラル 型の設計・開発 BMW 6seriesのシャシー 2 (2)PCの機能と構造︓ 2.製品アーキテクチャとモジュール化 ⾃由に部品を組み合わせて HPのデスクトップPC (1)製品アーキテクチャとは何か 製品を作ることができる 製品アーキテクチャ︓製品設計の基本思想 各部品が、他の部品の機能 製品を構成する個々の部品や要素の間のつなぎ方 HDMI に干渉しない どのようにして製品を構成部品(コンポーネント)に分割し、 DELLのディスプレイ 各部品は、他の部品の機能 製品機能を配分し、部品間の接合部である インターフェイス を USB 3.0 を考慮せずに開発できる 設計・調整するかに関する基本的な設計思想 Lenovoのキーボード Bluetooth 各部品は、メーカーに関 USBメモリ 係なく、 製品の「機能」がどのような「構造」によって実現されるのか︖ で必ずつながる モジュール型 機能設計と構造設計のつなぎ方を考える の設計・開発 Logicool 3 4 (2)製品アーキテクチャの類型 ② 企業境界からみた分類 ① 部品設計の相互依存度からみた分類 ◆ クローズド ◆モジュラー 情報の社会的な共有・受容が制限される 機能と構造(部品)を一対一に対応させ、それら機能を持つ部品を → 企業内または一定範囲の企業間で設計・開発が⾏われる傾向 インターフェイスで連結させて、システム全体を構成する → 企業内・企業間のすり合わせ能⼒が競争⼒の源泉になる ディスプレイ PC本体 メモリ SSD/HDD キーボード (表示) (性能) (⼊⼒) interface interface ◆ オーブン ◆インテグラル システムの構築、改善、維持に必要とされる情報が公開され、 機能と構造(部品)の対応関係が錯綜しているため、システム全体と 社会的に共有・受容される して実現したい機能があるならば、部品間のすり合わせで機能を調整 → インターフェイスが業界内で標準化されているので、企業の境界を する必要がある 超えて寄せ集め的に設計・開発が可能 ※ 部品間のバランス・調整で性能が決まる︕ シャシー エンジン 制御システム その他の部品 → 基本的にモジュラー型 5 6 ③ 藤本隆宏による分類 (3)モジュール化の便益 部品設計の相互依存度 ① システム的な性質からみた一般化 インテグラル モジュラー クローズド モジューラー型のシステム 企業を超えた連携 例)⾃動⾞ 例)メインフレーム オートバイ 工作機械 モジュール1 モジュール2 モジュール3 軽薄短小家電 レゴ (機能1) ゲームソフト (最近の⾃動⾞) Interface A (機能2) Interface B (機能3) オープン システム的な性質からみた一般化 例)パソコン パッケージソフト サブシステム1 サブシステム2 サブシステム3 ⾃転⾞/ロードバイク 連結ルールA 連結ルールB 7 8 ② モジュール化の便益︓各モジュールの機能向上 ③ モジュール化の便益︓多様な部品の組み合わせが可能 (機能1) (機能2) (機能3) (機能1) (機能2) (機能3) モジュール1 モジュール2 モジュール3 モジュール1 モジュール2 モジュール3 消費者は、それぞれの機能にたいして好きなモジュール(部品)を選び、 それらを組み合わせた製品にカスタマイズできる 他のモジュールを考慮せずに、⾃分の機能を高めればよい → 同じモジュールを開発する企業間(部品会社間)の開発競争が激化 部品の開発・設計から組⽴てまでを⾏うメーカーでなくとも、部品を市場 で調達し組み⽴てるだけで製品を販売できるようになる モジュール1 モジュール1 モジュール1 PCの販売店であったDellは、簡単にPCを組⽴てられることに気づき、部品を 各モジュール内での競争により、それぞれの機能が向上し、システム全体 購⼊し、組⽴たうえでDellのブランドで販売することに成功した の質の向上につながる ※ オープン・モジュール化が進むと、垂直統合企業の優位性は低下する 9 10 (4)製品アーキテクチャのダイナミズム ◆技術者の NIH 症候群 (Not Invented Here Syndrome) 望ましい製品アーキテクチャは変化するため、それに応じて望ましい ある技術が組織の外部で開発されたにもかかわらず、別の組織が開発 組織アーキテクチャ(組織設計の基本思想)も変化することになる したという理由だけで、その採⽤を⾒送り、⾃⾝で同じものを開発しよ うとすること。このような⾃前主義が統合型企業の効率を下げる。 インテグラル モジュラー クローズド 内部での 標準化 ◆ モジュラリティ とは︖ クローズド・ クローズド・ インテグラル モジュラー モジュール化のもとで各⾃がモジュール生産に特化した組織を構築 (統合が効果的) 業界標準の形成 外部企業(部品メーカー)の成⻑ システム全体が⾒直されるような重⼤なイノベーション システム オープン 全体の⾒直し → 各モジュールだけの知識では対応できなくなる オープン・ NIH症候群/⾃前主義 モジュラー による統合型企業の罠 モジュラリティ の罠 モジュール化に対応した組織は、インテグラル型の開発や生産が望ま (水平分業が効果的) しい状況になったとしても、その対応に遅れ、利益の獲得機会を失う 11 12 3.モジュール化の歴史と現在 ◆それまでのメインフレーム・コンピュータ︓ 型 各モデルに固有の、オペレーティングシステム(OS)、プロセッサ、 (1)モジュール化の歴史︓IBM system 360 周辺機器やアプリケーション・ソフトを持っていた 1964年 IBMがsystem 360 改良のたびに特別なソフトウェアや部品を開発する必要あり を発表 ソフトに欠陥があれば、すべてのデータが消失する可能性あり そのリスクから、ユーザーは新製品への買い替え意欲が刺激されない IBM system 360とは︖ モジュール モジュール化された ◆IBM system 360︓ 型 最初のメインフレーム 部品ごとに改良を加えても、互換性を持つためトラブルが発生しない IBMは中央プロセッサ管理部を設置 水平分業が進展 各モジュールが他のモジュールに干渉せず、相互に正しく機能する 共通の「デザイン・ルール」を構築 各モジュールにおいて、部品は互換性を持ちやすくなる 13 14 ◆IBM system 360のモジュール化から水平分業へ (2)モジュール化の現在︓⾃動⾞産業におけるモジュール化 各モジュールは、デザイン・ルールに従ってさえいれば互換性を持つ インテグラル型の代表であった⾃動⾞にて、現在モジュール化が 進んでいる(クローズド・モジュラー)。 デザイン・ルールを熟知したIBMの技術者が部品メーカーを設⽴ フォルクスワーゲンのMQB あるいは、部品メーカーへ引き抜かれる もっとも⾃動⾞開発のモジュール化を進めてきたのがフォルクスワーゲンである。製品開発者よりも、 今後10年にわたって通⽤するモジュールのアーキテクチャを設計することを重視している。現在は、 エンジンだけでも、吸気モジュール、排気モジュール、過給機などの複数のモジュールを組み合わせて プリンタ、端末、メモリ、ソフトウェア、CPUに至るまで、新興 豊富なバリエーションで生産できるようになっている。Audiなど他ブランドでもそれを採⽤している。 企業がIBMと互換性を持つ製品を提供し、競争をしながら成⻑ 日産のCMF 日産⾃動⾞は、⾞体に関する4つのモジュールと電⼦部品という5つのモジュールに分け、⾞両を構成 メインフレームはモジュールごとに進化をとげたものの、IBMの するという「CMF(Common Module Family)」による開発を進めている。 シェアは低下 トヨタの TNGA (Toyota New Global Architecture) トヨタは、セグメント別のプラットフォームは残しつつ、同じプラットフォームを使う複数の⾞種を同 時に開発する「グルーピング開発」を進めている。 15 16