ローマの貨幣：地中海世界での流通

ローマの貨幣と地中海世界

• 地中海世界の東方で通用していたアテネのドラクマを置き換える国際通貨として、ローマのデナリウス銀貨が3世紀末に広く用いられるようになった。
• イタリア半島統一戦争やポエニ戦争・マケドニア戦争によってローマの支配が地中海世界全域に及んだため、ローマの貨幣が広がっていった。
• デナリウス銀貨はローマ帝国の国際通貨として、300年間にわたり地中海世界で用いられた。

ローマの貨幣制度

• 基本通貨はデナリウス銀貨で、ローマでは金が産出しなかったため銀貨が使用された。
• セステルティウス（真鍮貨）は物価の基準単位として、トゥボンディウス（真鍮貨）アス（小さな青銅貨）は少額貨幣として用いられた。
• およその価値として、兵士の給与は年額450デナリ、高級地域の一軒家は50万デナリ、中級ワイン一本は1セステルティウス、穀物は5デナリで約10日分のパンになる分が買えた。

デナリウスの遺産

• 西ローマ帝国が滅亡した後も、中世ヨーロッパやイスラーム世界でデナリウスという貨幣単位が使用された。
• 今日でも、ディーナールなる単位を用いる国々がある。
• イギリスのペニーが「d」で表されることや、旧ユーゴスラヴィアにディナルという貨幣の呼称が残っていたことから、デナリウス貨の広がりがわかる。

ローマの貨幣鋳造

• 造幣三人委員会は共和政時代からローマで貨幣の鋳造に当たる官職として存在した。
• 共和政時代には、造幣委員が自分の先祖の事績を貨幣の図柄にしていた。
• 内乱の1世紀の時期には、ポンペイウスやカエサルなど有力者の肖像の図柄が現れた。